スナック ※Effie Ⓡ Awards より引用 (www.effie.org)

不況で家計節約、競合乱立で販売不振のブランドをどう立て直したか。
リッツ・ビスケットの再価値化戦略。
リッツ“とことん楽しもう”キャンペーン

戦略的アプローチ

背景:

  • リッツは、素晴らしいブランド
    1934年にthe National Biscuit Company (Nabisco現ナビスコ)が、美味しいビスケットを誕生させた。一般家庭から名門のワードロフ・アストリア ホテルに至るまで供されるポピュラーなビスケットになった。リッツは、バタークラッカーとして、堅調なセールスに支えられて2003年まで推移した。

  • 素晴らしいブランドの2つの問題
    1.よりお洒落なクラッカー
    チーズやディッピングと一緒に食べるソフィスティケートな競合商品が、古典的なリッツをおびやかし始めた。
    2.競合が激化
    2006年だけでも、65の新しいクラッカーが市場参入した。リッツが選択される理由を失いつつあった。

市場への挑戦:
リッツがあまりにも当たり前の存在になったため、数百万のアメリカの家族は、リッツを格別のものと感じなくなった。リッツの主要顧客である34-55歳の母親世代に対する接点を喪失していた。リッツのコモディティ化、これが競合に弱い原因と考えられた。私たちの使命はシンプルだった:リッツを食べるたびに、“リッツ気分”を味わってもらうこと。私たちの挑戦は、“リッツの歓び”を再び呼び戻すことだった。

目的

  • 市場における競合的な地位を奪回する(・低下する市場シェアを取り戻す・前年より売上高を伸ばす)。

  • コミュニケーション目標として、・エモーショナルな結びつきをつくるために、リッツのどこが好きか、リッツにこだわる理由を見つけ出し、それに気付いてもらい、感情移入してもらう。

  • 現在に通じるリッツらしさを確立する。

ビッグ・アイデア

目的を達成するための膨大なインタビュー調査の結果は、ターゲットは幅広く、好きな理由も多様だった。

  • 生活者インサイト:リッツをいつ、どこで、どう食べるかなど決めつけないでほしい。リッツに対する気分を何かのタイプにあてはめないでほしい。「リッツは、マイブランド」
      生活者インサイトを通じて3つの角度から分析:
      ・記号学: “リッツらしさ”の根源は、「楽しさ」
      ・消費データ:リッツが消費されるのは、多様な「楽しい機会」
      ・面談データ:50%の顧客は「リッツは、アメリカの最高に楽しいクラッカー」
      以上の回答を収斂すると、以下のブランド・インサイトになる。

  • ブランド・インサイト:「リッツの喜びは、楽しさである」

実施

リッツのリブランディング:
生真面目なリッツを楽しいリッツに変えるには、広告だけでは出来ないことです。ゼロから始めるリッツ・ブランドの再発見(価値、差別化等)の作業でした。
リッツクラッカーの形(半円の切り込み+7つの穴)を、グラフィカルなアイコンにして、新しいタグラインを与えた:「Open for Fun(とことん楽しもう)」

リッツの楽しさづくり:
まぎれもない“リッツらしさ”をあらゆるタッチポイントで徹底するために、“リッツの楽しさ”を定義した:
・爽やかな楽しさ:ママを中心にした家族の楽しみ
・大きな楽しさ:クラッカーブランドにはない熱い楽しみ
・驚き:リッツに対するアメリカの見方が変わるかも知れないくらいの、意外な展開
 http://www.youtube.com/watch?v=oRuPWRtQDRU&NR=1

その他
●サンダンス映画祭(ライトアップのイベント)
●“リッツ/楽しさ分析”(全米1,000人アンケートで、人生と楽しさについての調査を行い、結果を報道機関へリリースして話題提供)
●リッツ/アイコンを使ったテトリス等のオンラインゲーム
●Open for Funのタグラインとアイコンを使った新パッケージ限定デザイン、店内フロアー装飾
●輸送トラックの装飾等を行ってバイラル効果を追求した..

結果

  • 08年リッツ・ルネッサンスの結果は、市場シェアが07年4%減が、08年6%増に転じた。

  • 売上は、07年度から10%アップし、低落化が始まった03年レベルを超えた。

  • 40万人の人々が、リッツのオンラインゲームを楽しんだ。

  • リッツの“楽しさ分析”では、372の雑誌等の報道になり、マスコミやオンラインで1億回引用された。

  • リッツの新アイコンは、広告賞を受賞(・ワンショウの銀ペンシル・カンヌのデザイン部門ショートリスト等)

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QP eyes

興味深いのは、この“ブランドの持つ楽しさ”の表現コンセプトは、英国のキャドベリー・チョコレートが調査で発見したものと同様だった。キャドベリーは、ゴリラを使い、チョコの楽しさを伝えて、08年カンヌのフィルム部門でグランプリを獲得したことは、記憶に新しい。 (ムービー

一方、リッツのテレビCMは、保守的でつまらないが、主要ターゲット(34-55歳主婦)を失いたくない意向が働いたものと思われる。固定ファンを持つリッツにとっては、変革と手堅さが必要だったというのがよく分かる。 
PB商品との価格競合を避けて、ブランドの再価値化を試みる動きは、リッツブランドに留まらない普遍性を持っていると思われる。